ジャカルタで出産

私には2人息子がいる。2人ともジャカルタで産んだ。1人目を妊娠しているとき、胎盤が子宮の出口を覆っている前置胎盤だったため帝王切開で出産。2人目は妊娠自体に問題はなかったのだが、1人目を帝王切開で出産しているため、自然分娩にすると子宮破裂の恐れがあるとのことで2人目も帝王切開で出産した。妊娠中の検診は一ヶ月に一回、妊娠後期に差し掛かると2週間に一回から一週間に一回になり、出産となる。検診のたびにエコーで画面を見せてくれるし、きちんと体の部位のサイズも図ったうえで成長が順調かどうかキチンとみてくれるので安心である。もっと適当かと心配していた。

 私は出産予定日の一ヶ月くらい前から前置胎盤による出血のため、ベッドの上で絶対安静となり入院する羽目になった。出血といっても痛みを感じたりはないのだが、動くとすぐにドバーっと出血するため、子宮収縮を抑える点滴を打ちながらおとなしくしていた。どこも悪くないのに動けず安静にしていなければいけないというのは結構ツラい。どんどん大きくなっていくお腹でうつぶせに寝ることができないのと、足の爪が切れないのがイライラしたものである。

 帝王切開での出産ができる時期が近付いてきたので、手術費用はどれくらいか、入院期間はどのくらいか、病室はどうしようか等を相談しに病院の事務局にいったところ、パンフレットを渡された。帝王切開は「3 Days パッケージ」…。他に選択肢無し。海外での出産を心配した母が日本から妊娠・出産についての本を数冊送ってくれていたので、それを読んでいた私は帝王切開では2週間くらい入院するものだと思っていた。3日ですか??大丈夫かいな、と聞く私に「帝王切開後は術後の癒着を防ぐためになるべく早めに動くことが肝心。病院にいても自宅にいても同じこと。もし傷が開いちゃったりしたときにだけくればいい。」とのこと。では、それでお願いします、ということで3 Days パッケージで産んだのだった。

 手術自体は下半身のみの部分麻酔で30分くらいで終了する。横に十数センチ切る切り方だった。私にとっては初めてのお産だし、緊張しまくりであったが、医者・看護師チームは慣れているのだと思うが、私の腹を切りながら「ランチはパダン料理(インドネシアの地方料理のひとつ)がいいな。テイクアウトにして持って来てもらって」などと話している私の主治医。リラックスしすぎ…。長男を取り出したあと私の胸の上にのせる「カンガルーケア」?みたいなこともしてくれた。あとは任せた…、とばかり私はもう休むだけ。取り出された赤ちゃんは最初に父親である私の夫からアザーン(モスクから流れる礼拝呼びかけの言葉。私の夫はイスラム教徒)を聞かされる。私が手術室に入る前に先に出産を済ませた女性がいて、その旦那さんがうれしそうにおんなじことをやっていたので、イスラム教徒はそうするらしい。

手術が終わった後休む私につきそう夫に看護師が「胎盤、持って帰りますよね?」と聞いた。「はい。お願いします」と普通に答える夫。ビニール袋に入れられた胎盤を持って自分の自宅へ持っていった。これはインドネシアの地方によって多分違うかもしれないが、バリ人もおんなじようなことをするのを知っている。胎盤をきれいに洗ってツボにいれ、埋める。花やお香を備えてロウソクをともす。私は意味は知らないので、こういうもんなのだなと麻酔が切れ始めて痛くなったお腹のほうが気になりだしたので考えている余裕がなかった。

 帝王切開での出産は術後が痛い。くしゃみや咳をすると傷にダイレクトにきて痛む。できれば自然分娩で産んでみたかったが、こればかりはしょうがない。でも帝王切開でいつ生むのか決められるのはよかったのかもしれない。もし、ジャカルタの渋滞の中でタクシーの中とかにいて破水とかして産気づいたらと考えるだけでも怖い。ともあれ、無事に産まれたので感謝、感謝である。